インターナルフォーカスとエクスターナルフォーカスの比較-内的同調因子と外的同調因子の効果-

スポーツや運動学習において、インターナルフォーカス(内部指向)とエクスターナルフォーカス(外的指向)、またそれぞれに関連する内的同調因子(Internal Synchrony Factor)と外的同調因子(External Synchrony Factor)の違いは、運動効率やパフォーマンスに大きな影響を与える重要な要素です。

インターナルフォーカス(内的同調因子)とは

インターナルフォーカスは、自分の体の動きや筋肉の動作に意識を集中させる戦略を指します。

例えばランニング中に「膝の動きを意識する」や、「腕の振り方に集中する」といった行為がこれに該当します。

インターナルフォーカスのメリットとしては、まずは動作の基本を理解しやすく、新しいスキルの習得に有効であること、また感覚的なフィードバックを通じて身体動作を詳細に把握できることなどが挙げられるでしょう。

一方でデメリットとしては、過度に意識を集中させると動作がぎこちなくなる場合が多く、パフォーマンスの場面では自然な運動が妨げられる可能性があることが挙げられます。

一般的に研究では、初心者や運動スキルの基礎を学ぶ段階において、インターナルフォーカスが特に役立つとされていますが、一方で熟練度が向上するにつれて効果が阻害されることがわかっています。

エクスターナルフォーカス(外的同調因子)とは

エクスターナルフォーカスは、運動の結果や環境的な目標に意識を集中させる戦略です。

例えばバスケットボールで「リングに正確にボールを投げ入れる」や、ゴルフで「ボールをターゲット方向に打つ」といった行為が該当します。

メリットとしては、動作の自動化が進み効率的でスムーズな運動が可能になること、不必要な筋緊張が減りエネルギー効率が向上すること、高いプレッシャー下でも安定したパフォーマンスを発揮しやすくなることなどが挙げられます。

逆にデメリットといえば、初心者には抽象的過ぎて具体的な動作改善につながりにくい場合があることが挙げられます。

多くの研究はエクスターナルフォーカスが熟練者のパフォーマンス向上に寄与することを示唆しており、このアプローチは競技レベルが上がるほどその効果が明確になるとされています。

内的同調因子と外的同調因子の科学的研究

1.Wulfら最適学習理論(OPTIMAL Theory)

Gabriele Wulfらの研究によると、エクスターナルフォーカスは注意資源を効率的に配分し、神経筋の協調性を高めることで、学習効果を最大化することが示されています。

この理論ではエクスターナルフォーカスが「自律性」と「成功の期待感」を向上させることが鍵とされています。

2.初心者と熟練者におけるフォーカスの違い

初心者には動作の基本を学ぶためにインターナルフォーカスが適していますが、早期にエクスターナルフォーカスへと移行することで、学習の効率化が期待できます。

一方で熟練者では、外的同調因子への意識がパフォーマンスをさらに高める要因となります。

3.神経科学的アプローチ

脳科学の研究では、エクスターナルフォーカスが脳の運動野の効率的な活動と関連し、運動の自然な流れを促進することが示されています。

一方、インターナルフォーカスは脳の過剰な活動を引き起こし、動作の硬直を招く場合があります。

運動学習における実践的応用

1.初心者への指導方法

初心者には、基本的な動作を理解させるためにインターナルフォーカスを活用します。

その後、具体的な外部目標に意識を向けさせる指導へと移行します。

2.熟練者へのトレーニングアプローチ

熟練者には、エクスターナルフォーカスを徹底的に活用し、効率的な動作を維持させます。

例えば、テニスのトレーニングでは「ターゲットに向かってボールを正確に打つこと」に意識を集中させることで、自然な動きが引き出されます。

3.フィードバックの方法

コーチやトレーナーが提供するフィードバックは、外的同調因子を重視した表現を用いるべきです。

例えば、「腕を伸ばす」といった指示よりも、「目標地点に力強くボールを運ぶ」といった目標志向のフィードバックが効果的です。

インターナルフォーカスとエクスターナルフォーカス、またそれぞれに関連する内的同調因子と外的同調因子は、運動学習やパフォーマンス向上において重要な役割を果たします。

初心者の段階ではインターナルフォーカスが有効ですが、熟練者や競技者においてはエクスターナルフォーカスがより高い効果を可能にします。

科学的研究や神経科学的知見を踏まえ、選手のレベルや目標に応じたフォーカス戦略を採用することが、効率的で持続可能なスキル習得を可能にします。

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