風邪をひいたら薬を飲んで治します。盲腸になれば手術をして治します。これらの体の問題は1回治療をすればすぐに解決しますよね。では腰痛や肩痛などの痛みはどうでしょうか。痛みの悩みは10年、20年と続くことも少なくありません。ではなぜ痛みは治らないのでしょうか。
痛みには種類がある
痛みには急性疼痛と慢性疼痛の2種類があります。急性疼痛は身体の一部をぶつけたり事故に遭ったりしたときに一時的に起きる痛み。慢性疼痛は3カ月以上続く痛みのことです。慢性疼痛はさらに侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛の3つに分けることができます。
侵害受容性疼痛
火傷や骨折などのケガをおったとき、末梢にある侵害受容器という器官が刺激を受け取ります。こうして引き起こされる痛みのことを侵害受容性疼痛といいます。侵害受容性疼痛は殆どが急性のもので、安静にしたり薬や手術といった治療を行うことで痛みを取り除くことができます。
神経障害性疼痛
何らかの原因によって神経が障害されて発生する痛みのことを神経障害性疼痛といいます。一般には神経痛ともいわれていますが、坐骨神経痛や頚椎症などがこれにあたり、長期にわたって続くことが多い痛みです。
心因性疼痛
仕事や日常生活の中で身体的、もしくは精神的に何らかのストレスを受け続けることで現れる痛みのことを心因性疼痛といいます。実際にどこかケガをしているわけでもないのに痛みが出ることが特徴で、自律神経や内分泌系の異常によって生じるとされています。
痛みが治らない理由
慢性疼痛を完治させることは容易ではありませんが、緩和することは可能です。そのためには痛みの原因を探り当てることが重要となります。例えば火傷(侵害受容性疼痛)の場合は、受傷直後に水で冷やし、その後も定期的に保冷剤で患部を冷やす。坐骨神経痛(神経障害性疼痛)の場合は不良姿勢を改善するために股関節のストレッチを行うなどが対処法として考えられます。
しかし慢性痛は3種類の疼痛が複雑に絡み合っていることが多く、原因の特定が困難ケースが多く見られます。原因が特定できないと正しい対処をすることができません。これが痛みが完治しない原因です。
慢性疼痛は完治ではなく緩和を目指す
例えばデスクワークという仕事上不良姿勢が続き、上司からの叱責でストレスもたまっているという場合、不良姿勢を正しただけでは痛みを完全に取り去ることはできません。精神的なストレスにまでアプローチしていないからです。ただこの場合、不良姿勢を治すことで痛みを緩和することはできるでしょう。痛みの原因を紐解き、1つ1つ解決していく。道のりは長いですが、痛みを改善していくためにはこれが一番の近道と言えます。なかなか改善しない痛みに対してストレスを感じていてはかえって心因性疼痛の原因となり得ます。よって慢性痛に対しては根気強く、1%でも痛みが改善していれば自分をほめるくらいの気持ちで臨むことをお勧めします。