テニス肘とは短橈側手根伸筋を中心とした前腕伸筋群の使い過ぎにより、肘の外側に痛みを生じる障害です。肘の外側つまり上腕骨の外側上顆に炎症が起きるため、医学的には上腕骨外側上顆炎といいます。テニス肘(以下上腕骨外側上顆炎)という名の通りテニス選手に多い障害ですが、実際にはスポーツ以外の日常動作が原因で発症するケースも少なくありません。使い過ぎによる炎症は繰り返し起きることも多いため適切なケアが必要となります。
原因
上腕骨外側上顆炎の発症率は20代の若年層で低く、30代~50代の中高年層で高くなります。一部の研究ではテニス以外にも、重労働の仕事、利き手の前腕回内位で手を握るような作業、慢性的な高血糖状態(HbA1cが6.5以上)が発症に関与しているという結果が出ています。20代の若年層と比べて中高年層は前腕伸筋群の付着部に加齢変化が起きているため、発症率が高くなる傾向にあります。
症状
上腕骨外側上顆炎の主な障害部位は手関節伸筋群の中でも短橈側手根伸筋腱の近位付近です。その病変は腱付着部症で、付着部の変性に伴い腱繊維の微小断裂、部分断裂や完全断裂、石灰化が超音波検査で明らかになりました。病理所見では、膠原繊維の変性断裂、線維芽細胞増生、毛細血管の増生が報告され、疼痛との関連が指摘されています。また短橈側手根伸筋腱下面の感覚神経分布の増加を認める報告もあり、TNF-αサイトカインや同レセプターの発現が報告されています。
発症に関与する筋骨格的特徴としては近位橈尺関節の開大などのアライメント異常があります。また肘外側の痛みの原因として、神経根症状や橈骨神経障害が含まれており、これらの疾患の鑑別が必要です。
治療
治療の選択肢としては①手術、②ステロイド局所注射、③理学療法などがある。
①手術
主な方法としては腱切離手術と、鏡視下手術の2つがあります。腱切離手術は傷口が大きくなりますが、神経への処置も同時に行うことができます。鏡視下手術は内視鏡を使って行うため傷口が小さいことがメリットとしてありますが、デメリットとして神経への処置は行うことができません。どちらも術後一定期間が経つと再発するリスクはあります。費用、リスクのことを考えると手術はかなり大きな決断がいる選択です。
②ステロイド局所注射
ステロイドの局所注射は短期的有効性は認められていますが、半年以上の長期的な経過を見ると痛みや機能的な面においても有効性は認められていません。一度の投与では完治には至らないということです。
③理学療法
理学療法には運動療法(ストレッチ、マッサージ、筋力訓練)、物理療法(超音波、温熱、アイシング)など複数の方法があり、それらの有用性が報告されています。前腕屈筋群の使い過ぎが原因となる上腕骨外側上顆炎ではその部分のストレッチが有効であり、中長期的に行っていく事で症状の改善が見込めます。
これらの方法はあくまで選択肢の一つに過ぎません。原因となる習慣がないか見直し、費用やそれぞれの方法に伴うリスクを考えた上で自分に合った方法で原因を取り除いていく事が治療にとって大切です。答えが見つからない時はプロの意見を聞いてみることも治療のためのひとつの方法となるでしょう。